Ferdinand Waldmüller (1816-1885)

今年は、オーストリアのピアニスト・作曲家そして画家でもあったフェルディナント・ヴァルトミュラー(Ferdinand Waldmüller, 1816-1885)の生誕200年です。IMSLPによれば、本日9月11日が誕生日だそうですが、他の資料では9月1日となっています。

彼の父フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー(Ferdinand Georg Waldmüller, 1793-1865, 英Wikipedia)はビーダーマイヤー期のオーストリアの有名な画家で、代表作として以下のような晩年のベートーヴェンを描いた肖像画があります。クラシックファンなら見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。

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▲Ferdinand Georg Waldmüller『ベートーヴェンの肖像』(1823) (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Beethoven_Waldmuller_1823.jpg より 加工・転載)


息子フェルディナントは、チェコのブルノで生まれ、オーストリアで活躍しました。英語の文献では彼に関する情報がほぼ皆無で、19世紀最大級といえるフェティスの事典(仏語)でも彼に関してそれほど多くの情報は載っていませんし、情報も正確かどうか怪しいです(例えば、生まれをオーストリアだと書いている)。ただ、独語の文献には彼に関して詳しく書かれたものがありましたが、残念ながら私には読めません。いつか独語を十分に勉強できたら読み直してみたいです。

ヴァルトミュラーについて書かれた独語の資料:
Geschichte der Musik in Mähren und Österreich-Schlesien (https://archive.org/stream/geschichtedermus00elve#page/203/)
52 Biographisches Lexikon des Kaisertums Österreich (http://www.literature.at/viewer.alo?objid=11711&viewmode=fullscreen&scale=3.33&rotate=&page=190)



以下は、フェティスの事典に書かれていた彼の情報の拙訳です。前述のように正しい情報ではないかもしれません。

ヴァルトミュラー(フェルディナント)、ピアニスト、オーストリアに生まれ、その都市の音楽院で音楽教育を受け、また、カール・チェルニーからもレッスンを受けた。1840年時点で彼はブレーメンのピアノ教師であった。その後、彼はパリへと旅立ち、1846年時点でそこに滞在していたが、特筆すべきことはなかった。それから、彼はウィーンへと戻った。メケッティ、ハスリンガー、ヴィッツェンドルフ、その他の出版社から、この芸術家の名義の下で、多数の歌劇の主題に基づく幻想曲、夜想曲、タランテラ、サロン用練習曲、ロンドがウィーンで出版された。


Fétis, François-Joseph (1866), Biographie universelle des musiciens, Paris: Firmin Didot Frères 第8巻 pp.406-407


  1. 19世紀前半のドイツ圏で興った小市民的で簡素な文化様式(Wikipedia)
  2. チェコのブルノ生まれとするのが正しいと思われます。
  3. 独語の文献にはどうもチェルニーの名前は登場してなさそうなので、個人的には少し疑わしいと思っています。


Wikimedia Commonsに彼の絵画作品があったので紹介しておきます。多分、終油の秘蹟(Wikipedia)のために赴く司祭を描いたものでしょうか?タイトルのVersehgangというのが何なのか調べてもよくわからなかったです(´・_・`)

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▲Ferdinand Waldmüller『Der Versehgang』(1836) (https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3AFerdinand_Waldm%C3%BCller_Der_Versehgang_1836.jpg より 加工・転載)


作曲家としてのヴァルトミュラーは、作品番号にして159に及ぶ作品を残しているようですが、ネット上で楽譜を確認できたのは僅か4曲(Opp.87, 119, 140, 141)のみでした。ですので、彼の作曲家としての像をまだよく把握できない状態にあります。Op.87、Op.119、Op.141は、難度に差はあれど、サロン風のピアノ小品という感じですが、Op.140はピアノ三重奏曲でそれらとは異なるシリアスな作品に思われます。

今回演奏したのは、《グリレの影の踊り Der Grille Schattentanz (Pas d'Ombre) Op.119》という作品です。「影の踊り」という表題からは不気味な曲想をイメージしてしまいそうですが、全くそんなことはなく、バレエ音楽のような愛らしいワルツ風の小品となっています。

この作品を献呈されたのはドイツの女優フリーデリケ・ゴスマン(Friederike Goßmann, 1836-1906)で、彼女は「愛の妖精」という邦題で知られるジョルジュ・サンドの小説『La Petite Fadette』(Wikipedia)を原作としたシャルロッテ・ビルヒ=プファイファー(Charlotte Birch-Pfeiffer, 1800-1868, 英Wikipedia)による戯曲『Der Grille』(1856)でヒロインのグリレを演じました。この曲は、恐らくこの戯曲の中の場面を音楽に表現したものなのでしょう。もしかすると、実際に舞台で演じられる際に伴奏として演奏されるなんてこともあったかもしれません。前回に紹介したレオポルド・ド・マイヤーの《蟋蟀ポルカ Grillen-Polka Op.130》もこの曲と同じ頃に出版されゴスマンに献呈されており、戯曲の同じ場面を題材に書かれたものと思われます。Grilleには蟋蟀という意味があり、ヴァルトミュラーの作品の方に現れるトリルもその鳴き声を表現しているのかもしれません。



演奏はそれほど難しくなく、チェルニー30番程度の腕前があれば初見でもあまり躓かずに弾けるのではないかと思います。ただ、トリルを納得のいくように弾くのは少々苦労するかもしれません。あと、シンプルな分、粗が目立ちやすいです(自分自身の録音を聴いて痛感)。

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