Albert Loeschhorn (1819-1905)

ピアノ練習曲のみによって今日に名を残している作曲家は少なくありません。例えば、F.ブルグミュラーH.ベルティーニ、ル・クーペ、ベレンス、J.B.デュヴェルノワといった作曲家たち。今回紹介するアルベルト・レシュホルン(Carl Albert Loeschhorn, 1819-1905)もそのような一人でしょう。

レシュホルンは、音楽家の息子としてベルリンに生まれ、5歳から音楽を学び始めてたちまち才能を開花させました。1837年からはメンデルスゾーンの師として知られるルートヴィヒ・ベルガー(Wikipedia)に師事し、ベルガーの死後は王立教会音楽学校でA.W.バッハ(Wikipedia)、グレル(Eduard Grell, 1800-1886)、ベルガーの弟子であったキリッチギー(Rudolph Killitschgy, 1797頃-1851)の下で学習を継続しています。1851年にキリッチギーが亡くなると、レシュホルンはその後任の講師となり、1858年には教授に就任しました。また、彼は1846[1847?]年にシュタールクネヒト兄弟(Adolf Stahlknecht, 1813-1887, ヴァイオリニスト; Julius -, 1817-1892, チェリスト)とトリオを結成し、1853年にはロシアへの演奏旅行も実施し成功を収めています。

レシュホルンは、作品番号にして200に及ぶ作品を残しましたが、そのほとんどがピアノ曲で、サロン向けの小品の他、練習曲やソナタ、ソナチネのような教育的作品があります。また、『ピアノ文献の道標 Wegweiser in der Pianoforte-Literatur』(1862, J.ヴァイスとの共著)や『ピアノ文献の手引書 Führer durch die Klavierliteratur』(1885[1886?])のような著作も出版したそうです。

ちなみに、ピアノの発表会でお馴染みの《花の歌》の作曲者グスタフ・ランゲはレシュホルンの弟子の一人でした。



今回MIDIを作成したのは、《美しき乗馬婦人, 性格的小品 La belle Amazone, Pièce caractéristique Op.25》という作品です。当時は人気の高い作品だったようで、A.コンラーディ(Wikipedia)による4手版やG. Michaelisによる管弦楽版も出版されたようです。また、サンクトペテルブルグのTh. Stellowsky社から出版された楽譜の表紙によれば、この曲はヘンゼルトによって改訂を受け帝立教育機関の教材として採用されたそうです。



曲の構成は、以下のような複合三部形式になっています。

前奏 - [A - A' - B - A''] - [C - C' - D - C''] - [A''' - A'''' - B' - A'''''] - コーダ

曲想はブルグミュラーの《乗馬》に似ていますが、技巧的にはかなり派手になっています。Aは繰り返しごとに変奏され豪華になっていき、中間部は内声に置かれた主旋律を左右の手で分担して奏で、高音域ではアルペジオを奏でる所謂「三本の手」技法が用いられています。また、技巧的な華麗さだけでなく、Bでは遠隔調への転調(ハ長調→ホ長調→嬰ト短調→ロ長調→ハ長調)が行われるなど、軽妙な仕掛けも盛り込まれています。サロン向けの軽い小品で、深く心を打つような内容の作品でこそないかもしれませんが、様々な要素を織り込みながらも上手く纏め上げられいる完成度の高い作品だと思います。

この作品を聴いてみると、レシュホルンが単なる練習曲作曲家としてしか知られていないのが私には惜しく感じられます。練習曲しか今日に残っていない作曲家だからといって、それ以外の作品が必ずしも駄作であったというわけではないはずです。それはレシュホルン以外の作曲家に関してもいえるかもしれません。

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント