作品番号(Op.)が500を超える作曲家たち

 出版された音楽作品の識別のために割り振られる作品番号(Op.)、その使用はルネサンス末期~バロック初期には始まっていたと考えられており、最初期にそれを使用した作曲家としてはアドリアーノ・バンキエリやロドヴィコ・ヴィアダーナが挙げられます。しかし、バロック期までの作曲家の作品番号は大抵2桁に届くかどうかというくらいで、例えば、ヘンデルが7、ヴィヴァルディが12、コレッリが6といった具合です。多くても数十といったところでしょう。ただ、ボワモルティエは例外的に作品番号が100を超えていますが。当時は、19世紀以降に比べると出版譜の需要はかなり低かったと思われますし、また、一つの作品番号に協奏曲やソナタのような大規模作品が6曲あるいは12曲収録されているというのが普通でしたので、作品番号は大きくなりにくかったのでしょう。そもそも、J.S.バッハをはじめ、作品番号を全く使用していない作曲家も少なくありませんでした。

 古典派の時代になると、作品番号の利用はもっと広まり、ハイドンやベートーヴェン、クレメンティ、ボッケリーニ、J.C.バッハなど多くの作曲家の作品でそれが用いられています。今日では一般にケッヘル番号で識別されているモーツァルトの作品にさえもOp.番号が存在した形跡があるのです。当時は、ある一つの曲の作品番号が出版社によってバラバラになっていたりと混乱が多かったのですが、そのような中でベートーヴェンは系統立った作品番号を用いた最初の作曲家だといわれています。バロック期に比べると、大きな作品番号が付けられることも多くなり、ベートーヴェンのように100を超える作曲家も現れるようになりました。

 ロマン派の時代になると、作品番号が200や300に達する作曲家も珍しくなくなりました。かつてのようにソナタや弦楽四重奏曲といった多楽章の大規模作品を一つの作品番号に複数詰め込むということはほとんどなくなり、数ページのみの短いサロン小品などでも一曲で一つの作品番号が与えられるようになってきたというのがその背景にあるかもしれません。また、もちろん、市民社会の興隆やピアノの普及によって、楽譜の需要が高まったというのも大いに関係しているでしょう。そのような時代に、膨大な数の作品を書いたことで有名なのがチェルニーかもしれません。彼の作品番号は、なんと861にまで達しています。しかし、ここで驚いてはいけません。世の中には、作品番号においてそれを凌駕する量の作品を書いている作曲家がまだいるのです!前置きが長くなりましたが、今回はそういった巨大な作品番号を誇る作曲家たちを紹介していきたいと思います。


 今回調査するにあたってまず参考にしたのが、フランツ・パズディレクFranz Pazdírek編纂の『Universal-Handbuch der Musikliteratur』(1904-1910; 以下Pazdírekと称す)です。これは、古今東西の出版楽譜を作曲家ごとにOp.順(Op.なしのものはアルファベット順)に並べ一覧化したカタログで、これを地道に調べ上げOp.が500を超えている作曲家を記録していきました。ただ、膨大なカタログであるとはいえ、やはり世の中で出版された全ての楽譜が漏れなく記録されているというわけではなく、抜け落ちてしまっているものも少なくないと思われます。また、20世紀初頭に出版されたものなので、それ以降に出版された楽譜については当然載っていません。ですので、各地の図書館の蔵書カタログなど他の資料も適宜参照して補足しました。

 Pazdírekの『Universal-Handbuch der Musikliteratur』は、以下のリンクからデジタル化されたものを閲覧できます。
  1 (A - Azzoni)
  2 (B - Bellenghi)
  3 (Bellenghi - Boieldieu)
  4 (Boieldieu - Bywater)
  5 (C - Czynski)
  6 (D - Dziwak)
  7 (E - Gattermann)
  8 (Gattermann - Hall)
  9 (Hall - Hyspa)
  10 (I - Kuhe)
  11 (Kuhe - Löwenstein)
  12 (Löwenstein - Messner)
  13 (Messner - Normand)
  14 (Normand - Popper)
  15 (Popper - Rossi)
  16 (Rossi - Schwalm)
  17 (Schwalm - Swain)
  18 (Swain - Vogler)
  19 (Vogler - Zycka)

 また、留意しておきたいのが、たとえ作品番号が1000まで到達している作曲家だといっても、必ずしもOp.1~Op.1000までの全ての番号に作品が割り振られているとは限らないということです。すなわち、欠番が存在する場合があります。しかも、それは数点だけにとどまらず、数百もの欠番が存在していると思しきこともあります。例えば、(Pazdírekの情報によれば)Op.148の次にいきなりOp.541に飛んでいるJosef Čapka Drahlovskýのように、不自然な作品番号の付き方になっているものに関しては、その都度言及していくことにします。


 では作品番号が500を超える作曲家を、小さいものから順に紹介していきます。表記の仕方は以下の通りです。


その作曲家の(私が確認できた限りで)最大の作品番号
作曲家名
その作曲家の(私が確認できた限りで)最も作品番号の大きい作品の名前



 また、誤ったデータである可能性が高そうなものには、程度に応じて「やや疑問あり」「疑問あり」「恐らく誤り」と併記しています。

 以下の情報は暫定のものです。作品番号が500を超えている作曲家を新たに見つけたり、ある作曲家のもっと大きな作品番号の作品を見つけたりすることがあれば、情報を更新をしていくかもしれません。

最終更新:2017年4月2日



500
A. M. Cohen
Loving glances, gavotte Op.500


 A(rthur?).M.コーエンについて詳細はわかりませんでしたが、PresserやGordonといったアメリカの出版社から作品が刊行されているようなので、恐らくアメリカで活躍した作曲家だと思われます。



500     やや疑問あり
Richard Tourbié (IMSLP)
Am Elterngrab, Fantaisie über das gleichnamige Lied von Emil Winter-Tymian Op.500


 リシャール・トゥールビエ(1867生)は、ドイツの作曲家で、サロン向けのピアノ小品や合唱曲などを残しています。Richard BerndtやRolf Wielandといった筆名も用いたようです。Pazdírekの一覧では、Op.300あたりまでは、万遍なく作品が並んでいるのですが、Op.325以降は、Op.363、Op.401、Op.500とかなり飛び飛びになっています。



501
Christian Traugott Brunner (IMSLP)
Transcriptionen über beliebte Lieder Op.501


 クリスティアン・トラウゴット・ブルンナー(1792-1874)は、ドイツの作曲家で、人気旋律による編曲作品や教育的作品などピアノ小品を多数残しています。彼の練習曲の一部は、今日にも辛うじて生き残っており、例えば、ヤマハから出版されている『初歩のピアノ練習曲集2』に彼の作品が一曲収録されています。また、戦前にわが国で出版された『世界音楽全集第85巻 家庭音楽集(II)』には彼の《懇情, ロンド L’Amabilité, Rondo Op.170》(原題はL’Amabilité, Rondeau gracieux et brillant sur un Motif élégant de C. Gitt)が収録されています。18世紀生まれで作品番号が500を超えたのは、チェルニー以外では彼が唯一かもしれません。



502
Marius Carman (IMSLP)
Dans les près fleuris, paysannerie Op.502


 マリウス・カルマン(1911没)は、ベルギーの作曲家。主にピアノ曲を残しているようです。



507
Louis Kron (IMSLP)
Blütenlese der V-Liter. aus klass. u. romant. Zeit f. fortgeschritt. V-Schüler m. P Op.507


 ルイス・クロン(1842-1907)は、ドイツの作曲家。合唱曲を多数書いているようです。



509     疑問あり
Carl Wilhelm Drescher (IMSLP)
Linzer Buam-Marsch Op.509


 カール・ヴィルヘルム・ドレシャー(1850-1925)は、オーストリアの作曲家。Pazdírekの一覧では、Op.200あたりまでは、万遍なく作品が並んでいるのですが、Op.212の次にいきなりOp.509に飛んでいるので何らかの誤りである可能性も高いと思います。なお、IMSLPには《Bei Sang und Klang Op.315》があり、その出版年は1911年とされています。Pazdírekが1910年までに出版されていることを考えると、Op.315より200近く大きなOp.509がそれに載っているのはおかしい気がします。



509
Charles Fradel (IMSLP)
6 Studies in Phrasing Op.509 (IMSLPの楽譜)


 チャールズ・フラデル(1821-1886)は、ウィーン生まれのピアニスト・作曲家で、ニューヨーク等で活躍したそうです。作品には、ピアノ曲や歌曲があるようです。



509
Hermann Wenzel (IMSLP)
Die Weihnachtsglocken von M. Hanisch Op.509


 ヘルマン・ヴェンツェル(1863-1944)は、ドイツの作曲家。Pazdírekに載っている中では 《Gruß an Prinzessin Viktoria Luise Op.465》が最も作品番号の大きな作品ですが、ベルリン州立図書館の目録でOp.509の存在を確認しました。



514
Wilhelm Volckmar (IMSLP)
Fest-Präludien nach bekannt Choral-Melodien Op.514


 ヴィルヘルム・フォルクマール(1812-1887)は、ドイツのオルガニスト・作曲家。



519
Nicolo Coccon
Redentor, Canzone: Chi no vede la Zucca Op.519


 ニコロ・コッコン(1826-1903)は、イタリアのピアニスト・オルガニスト・作曲家。オラトリオ、レクイエム、ミサ曲、歌劇などの作品も残したようです。



526
Wilhelm Popp (IMSLP)
Für unsere Kinder, 17 heitere Klavierstücke Op.526


 ヴィルヘルム・ポップ(1828-1903)は、ドイツのフルート奏者・作曲家で、彼のフルート作品のいくらかは今日でも親しまれているようです。ピアノ学習者には、初級者向けの小品として《かっこう鳥の歌》(《Zwölf leichte Klavierstücke zum Vorspielen bei festlichen Gelegenheiten Op.263》の第3曲〈Kuckucksliedchen〉ではないかと思う)が知られているかもしれません。また、彼はH. Albertiという筆名でも多数のピアノ小品を出版しており、この名義での作品番号は118まで達しています。



526
Hermann Josef Schneider
Hochalma Diandl’n, Marsch Op.526


 ヘルマン・ヨゼフ・シュナイデル (1862-1921)は、ボヘミアの作曲家で、軍楽隊長として多数の行進曲を書いているようです。



530
Carl Kratzl (IMSLP)
Walzerlust Op.530


 カール・クラツル(1852-1904)は、オーストリアの作曲家。ウィーン音楽院でブルックナーの教えも受けたようです。Pazdírekやベルリン州立図書館の目録などを確認してもOp.38~Op.499までの長い範囲に亘る作品の詳細が不明。



541     疑問あり
Josef Čapka Drahlovský (IMSLP)
Neue Orgelstücke Op.541


 ヨゼフ・チャプカ・ドラロフスキー(1847-1926)は、チェコの作曲家。Pazdírekの一覧では、Op.148の次にいきなりOp.541が現れており、何らかの間違いである可能性も高そうです。



551
Traugott Munkelt
Zecherleben, Bierlieder Op.551


 トラウゴット・ムンケルト(1846-1918)は、ドイツの作曲家。



556
Henri Kling (IMSLP)
Fandango, danse espagnole Op.556


 アンリ・クリング(1842-1918)は、スイスで活躍したパリ出身の作曲家。ジュネーブ音楽院の教授を務めました。



560
Otto Hackh (IMSLP)
Seven drawing-room pieces for the piano Op.560


 オットー・ハック(1852-1917)はドイツ出身のピアニスト・作曲家で、アメリカに渡って活動しました。今日では《花の便り, ワルツ Message of the Flower, Melody Op.230-3》、《海上で, 舟歌 On the Sea, Barcarolle Op.230-5》、《夏の薔薇, マズルカ Rose d’Eté Op.230-6》といった数曲の易しい小品のみが知られています。Op.560は、アメリカの著作権登録情報を一覧化したカタログ『Catalog of Copyright Entries, Part 3 : Musical Compositions - New Series, Volume 9, Part 1, First Half of 1914』に記載されているのを確認しました。



566
Carl Michael Ziehrer (IMSLP, Wikipedia)
Letze Grüsse Op.566


 ウィンナー・ワルツで名高いオーストリアの作曲家カール・ミヒャエル・ツィーラー(1843-1922)は、作品番号が500を超えた作曲家の中では比較的有名な人物だといえるでしょう。Pazdírekには《Fächer Polonaise Op.525》までしか載っていませんが、英国ヨハン・シュトラウス協会のサイトにある作品一覧によればOp.566まで存在するようです。



570
Johann Evangelist Hummel
Rosenknospen, 8 leichte Tanzstücke Op.570


 ヨハン・エヴァンゲリスト・フンメル(1832-1910)は、オルガニストだったようですが、数多くのピアノ曲を残しているようです。Pazdírekに載っている中では 《Dirndl am Wolfgangsee Op.552》が最も作品番号の大きな作品ですが、ベルリン州立図書館の目録でOp.570の存在を確認しました。



588
Carlo Acton (IMSLP)
Souvenir de Rome, 5 Sonatine progressive facili e diteggiate Op.588


 カルロ・アクトン(1829-1909)は、イタリアのピアニスト・作曲家。Pazdírekに載っている中で最も作品番号が大きいのは《A ripetta, barcarolle Op.571》ですが、ベルリン州立図書館の目録にはOp.588がありました。



589
Carl Wappaus
Die Philosophischen Stiefelputzer Op.589


 カール・ヴァッパウス(1872生)は、ドイツの作曲家。Pazdírekには《Eine gepfefferte Belohnung, militärische Szene für 3 Herren Op.538》までしか載っていませんが、ベルリン州立図書館の目録ではOp.589まで確認出来ました。



600
Rudolf Förster
Du bist wie eine Blume, Walzer-Rondo Op.600


 ルドルフ・フェルスター(1860-1894)は、ドイツの舞踏音楽作曲家。



612
Oskar Junghähnel (IMSLP)
Des allen Sängers Ehrentag Op.612


 得られた数少ない情報によれば、オスカル・ユングヘーネル(1854-1925)は喜劇役者で、ドレスデンのJunghähnels humoristische Sängerの監督を務めていたようです。Pazdírekには《Mann bleibt Mann Op.545》までしか載っていませんが、ベルリン州立図書館の目録でOp.612の存在を確認しました。



612
Bernardo Calvó Puig
Himno para la Comunión ”Al hijo del Excelso” Op.612


 ベルナルド・カルボ・プイグ(1819-1880)は、カタルーニャの作曲家。



622
Franz Abt (IMSLP, Wikipedia)
Sommer Op.622


 ドイツの作曲家フランツ・アプト(1819-1885)は、多数の歌曲や合唱曲を残した声楽曲の大家です。特に《アガーテ, 燕が帰るとき Agathe, Wenn die Schwalben heimwärts ziehen Op.39-1》(IMSLP)は大ヒット作となりました。アプトの作品は、かつては世界的な人気を誇っていましたが、今日では演奏される機会は稀になっているようです。



657
Ernst Simon (IMSLP)
Weihnachtslied-Fantasie Op.657


 エルンスト・ジーモン(1850-1916)は、ドイツの作曲家で、ピアノ曲や声楽曲を残しているようです。Pazdírekに載っている中では《Allerliebste Schenkin du Op.634》が最も作品番号が大きい作品ですが、ベルリン州立図書館のカタログでOp.657の存在を確認しました。



673
Alfonso Cipollone (IMSLP)
Marcia brillante Op.673


 アルフォンソ・チポローネ(1843-1926)は、イタリアの作曲家。



675
Otto Teich (IMSLP)
Reich mir die Hand als Kamerad Op.675


 オットー・タイヒ(1866-1935)は、ドイツの作曲家。Pazdírekに載っている中では《Zwei fidele Kahlköpfe, Duett Op.511》が最も作品番号が大きい作品ですが、ベルリン州立図書館の目録にOp.675があるのを確認しました。



679
Ferdinand Friedrich
Zwei instruktive und brillante Vortragsstücke in mittelschwerer Spielart Op.679


 フェルディナント・フリードリヒ(1816 or 1823-1892)は、ドイツの作曲家およびピアノ教師。



680     疑問あり
Josef Löw (IMSLP)
Im Rosenmonat, melodisches Tonstück im leichten Stil ohne Oktavenspannung Op.680


 ヨゼフ・レーウ(1834-1886)は、チェコの作曲家で多数のピアノ小品を残しています。PazdírekにはOp.680が載っていますが、それより作品番号がひとつ若い作品はベルリン州立図書館の目録やHofmeisterのカタログで確認できる《O sweet and wondrous mystery, Es muss was Wunderbares sein Op.584》となり、100近くも飛躍していますので、Op.680に関してはPazdírekが誤っている可能性もありそうです。



684     疑問あり
Louis Köhler (IMSLP)
Ball-Sträusschen, Eine Sammlung ganz leichter, melodischer Tänze mit Benutzung beliebter Kinder-, Volks- und Opernmelodien Op.684


 ルイス・ケーラー(1820-1886)は、ドイツのピアノ教師・作曲家。彼の教育的なピアノ小品は今日でも親しまれていますが、それ以外の作品にも優れたものがあるように思えます。Op.684はHofmeisterのカタログによれば彼の没後に出版されたようですが、その前の作品番号の作品がOp.314となっており、倍以上も番号が跳躍しています。ベルリン州立図書館の目録には、「Nicht Köhler, Louis 1820-1886」と1820年生1886年没のルイス・ケーラーとは別人であるとコメントが書かれています。



694
Franz Behr (IMSLP, Wikipedia)
Wiener Lieder, Traumbild Op.694


 フランツ・ベーア(1837-1898)は、ドイツの作曲家。夥しい数のピアノ小品を残しています。また、彼はWilliam Cooper、Charles Godard、Charles Morley、Francesco d’Orsoといった筆名でも作品を発表しており、それぞれの名義での作品番号が166、160、110、102に達していますので、単純に足し算すれば1200を超える数の作品を残しているということになります。さらに、彼の作品には作品番号なしのものも多くあります。ベーアの作品は、サロン向けの軽い内容のものではありますが、単なる粗製濫造ではなく高い質を保持していると私は思います。彼の初級者向けの小品のいくらかは、今日でも子供の教材や発表会用の小品として広く親しまれています。



746
Luigi Bordèse (IMSLP)
Dimanche, Tarentelle Op.746


 ルイジ・ボルデーゼ(1815 ?-1886)は、パリで活躍したイタリア出身の作曲家です。初めは歌劇を書いていましたが成功せず、声楽教師や歌曲作曲家に転向して活躍しました。ミサ曲やレクイエム、モテットも書いたようです。Pazdírekの一覧では、Op.312の次にOp.740と大きく間が空いています。



788
Serafino Alassio (IMSLP)
La Figlia di Iorio tragedia pastorale di Gabriele D'Annunzio, Musica di Alberto Franchetti, piccola fantasia Op.788


 セラフィーノ・アラッシオ(1836-1915)は、イタリアの作曲家。Pazdírekに載っている中では《Germania di Franchetti, Fantasia facile Op.739》が最も作品番号の大きい作品ですが、ミラノ音楽院図書館のカタログでOp.788の存在を確認しました。



800
Wilfrid de Scheirder
L'Absente ! Romance sans paroles Op.800


 ウィルフリド・ド・シェイルデル(1907没)について詳細はわかりませんが、フランスで活動した作曲家だと思われます。Pazdírekに載っている中では《Mélodies des opéras célèbres Op.705》が最も作品番号の大きな作品ですが、フランス国立図書館のカタログにはOp.800がありました。



803
Hans Engelmann (IMSLP)
West-Point Cadet March Op.803 (オーストラリア国立図書館の楽譜)


 ハンス・エンゲルマン(1872-1914)は、アメリカで活躍したドイツ出身の作曲家で、膨大な数のサロン小品を残しました。中でも《Melody of Love Op.600》(IMSLP)は人気作となり、ビリー・ヴォーンなど様々なアーティストによってアレンジがされポピュラー音楽としても親しまれているようです。Pazdírekに載っている中では《Cupid’s Wooing, gavotte Op.702》が最も作品番号の大きい作品ですが、オーストラリア国立図書館にOp.803が存在するのを確認しました。



814
Joseph Rixner
Schneidige Wehr, Marsch Op.814


 ヨーゼフ・リクスナー(1825-1913)は、ドイツの作曲家で、ツィターのための作品をたくさん書いているようです。余談ですが、同姓同名の別の作曲家(1902-1973)もいるらしいです。



824
Hermann Starke
Deutsche Siege, Marche Op.824


 ヘルマン・シュタルケ(1870頃-1920頃)は、ドイツの軍楽指揮者・作曲家。Pazdírekに載っている中では《Mach' dein Fenster wieder zu! Rheinländler Op.788》が最も作品番号の大きな作品ですが、ベルリン州立図書館の目録でOp.824を確認しました。



861
Carl Czerny (IMSLP, Wikipedia)
Nouvelle Ecole de la Main gauche, 30 études progressives Op.861 (IMSLPの楽譜)


 ピアノ学習者にはお馴染みのカール・チェルニー(1791-1857)。今日では、練習曲の作曲家として有名ですが、それらは彼の作品番号にして861に及ぶ作品の内のほんの一部に過ぎません。人気歌劇の主題による変奏曲や幻想曲、ロンドといった作品、ソナタ、フーガ、室内楽曲、ピアノ協奏曲、交響曲など、アマチュア向けのものからヴィルトゥオーゾ向けのものまで、通俗的な様式のものから厳格な様式のものまで、ピアノ独奏曲から管弦楽曲までと実に多種多様な作品を書いているのです。今回の作品番号の大きさランキングではトップ10にすら入れなかったチェルニーですが、彼の作品には、100曲以上含む練習曲集に一つの作品番号が与えられていたり、ソナタや協奏曲、交響曲のような大規模な作品があったり、作品番号なしの未出版作品が多数あったり、作品番号の付かない編曲や校訂作品があったりすることを考えると、実際の仕事の量としては恐らくトップといってよいのではないかと思います。



892
Óscar de la Cinna (IMSLP)
Húa, húa zumba, danza peruana, morceau caractéristique Op.892 (スペイン国立図書館の楽譜)


 オスカル・デ・ラ・シンナ(1836-1906)は、スペインで活躍したハンガリー出身のピアニスト・作曲家で、チェルニーに師事したそうです。作品番号において、師を凌駕する量のピアノ曲を書きました。異邦人でありながら、スペインの民族色豊かな作品を多数書いており、アルベニスの先駆けのような存在といえるかもしれません。個人的に注目している作曲家の一人です。Pazdírekに載っている中では、《Malagueña flaminea Op.767》が最も作品番号の大きな作品ですが、スペイン国立図書館にはOp.892がありました。



920
Pietro Lebano
Onomastique, valse brillante Op.920


 ピエトロ・レバーノは、恐らくイタリアの作曲家だと思いますが、詳細はわかりませんでした。



986
Giuseppe Galimberti (IMSLP)
Mexicaine Op.986


 ジュゼッペ・ガリンベルティ(1850頃-1909)はイタリアの作曲家。Op.707はミラノ音楽院のカタログで確認しましたが、それからPazdírekに記述のあるOp.986までの間の作品番号(Op.708~Op.985)に関しては詳細不明。



1000     恐らく誤り
Henri Hertz
Esercizi Sulle 5 note Op.1000


 作品1000の《Esercizi Sulle 5 note》なる作品がPazdírekに載っていますが、恐らくHenri Herzの《ダクティリオンを利用した1000の練習曲 1000 esercizi applicati all'uso del dactylion》の1000を作品番号と混同した上に、作曲家名の綴りを誤記したものではないかと思います。ちなみに、ダクティリオンとはHenri Herzが考案したピアノ練習器具の名称です。



1001
Theodor Franz Schild
Illustrirtes Wiener Extrablatt. Marsch Op.1001


 テオドール・フランツ・シルト(1859-1929)は、オーストリアの作曲家で、舞曲や行進曲、声楽曲などを残しているようです。PazdírekやHofmeisterのカタログにOp.1001が掲載されているものの、Op.700~Op.900台の作品は確認できませんでした。



1039
Firtz Kirchner (IMSLP)
Die Schmiede Op.1039


 フリッツ・キルヒナー(1840-1907)は、ドイツのピアニスト・作曲家で、テオドール・クラクに学んでいます。



1081     恐らく誤り
Georges Lamothe (IMSLP)
Fantaisie sur Charles VI Op.1081


 ジョルジュ・ラモット(1838-1894)はフランスの作曲家。Pazdírekには、Op.1074、Op.1077、Op.1078、Op.1079、Op.1081が載っていますが、恐らくAntony Lamotteの作品と混同してしまっているものと思われます。それらを除いても、ジョルジュ・ラモットは作品番号にして306に及ぶ作品を残していますのでそれなりに多作家だといえます。



1200
Antony Lamotte (IMSLP)
Ail de velours, Mazurka élégante Op.1200


 アントニー・ラモット(1819-1912)は、フランスの指揮者・作曲家。Pazdírekに載っている中では《Fantaisie sur l’Ombre Op.1103》が最も作品番号の大きな作品ですが、フランス国立図書館のカタログでOp.1200を確認しました。



1283
Arnoldo Sartorio (IMSLP)
Aime Moi ! Op.1283 (IMSLPの楽譜)


 アルノルド・サルトリオ(1853-1936)は、ドイツの作曲家で、膨大な数のピアノ小品を残しています。Pazdírekに載っている中では《In Jubel und Trute! Neues Wiener Tanzalbum, 12 leichte Tänze Op.846》が最も作品番号の大きな作品ですが、IMSLPにはOp.1283の楽譜があります。彼については、アメリカの音楽雑誌『The Etude』でも1912年に「Arnold Sartorio, Well Known Composer, Reaches Opus 1000」という見出しで記事が書かれています。



1304
Ludwig Gruber
Ich bin eine kleine Prinzessin, Mädchenlied aus dem Zyklus "Kinderglück" Op.1304


 ルートヴィヒ・グルーバー(1874-1964)は、オーストリアの作曲家。生没年を調べて、50年ほど前まで存命だったということに驚きました。Pazdírekに載っている中では《Ah da schau i ja! Marchelied Op.1008》が最も作品番号の大きな作品ですが、オーストリア国立図書館の蔵書カタログでOp.1304の存在を確認しました。



1312
Robert Stolz (Wikipedia)
Kitty und die Weltkonferenz Op.1312


 ロベルト・シュトルツ(1880-1975)は、オーストリアの指揮者・作曲家。2016年のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの1曲目として演奏された彼の《国連行進曲 UNO-Marsch Op.1275》の作品番号を見て興奮を覚えてしまったのは私だけでしょうか?40年ほど前までご存命だった作曲家なので、ネット検索すれば詳細な作品リストとか出てくるのではないかと期待したものの見つからず。ロベルト・シュトルツについて書かれたフランスのウェブサイトで言及されていたOp.1312が、現時点で私が確認できた彼の最も作品番号の大きな作品です。もし、シュトルツの作品番号がいくつまで到達しているのかご存知の方がおられましたらご教授いただけると嬉しいです。



1402
Ferdinand Leicht
Da wird am’s Herz so weich Op.1402


 フェルディナント・ライヒト(1870-1922)は、オーストリアの作曲家。代表作に歌曲《私と月 I und der Mond》(恐らくOp.240)があります。Pazdírekに載っている中では《Sein so net verwandt mit mir? Op.1203》が最も作品番号の大きな作品ですが、ベルリン州立図書館の目録でOp.1402の存在を確認しました。



1917
James Bellak (IMSLP)
Amusements for Organ and Piano Op.1917 (アメリカ議会図書館の楽譜)


 ジェイムス・ベラック(1814頃-1891)は、アメリカの作曲家。Pazdírekに載っている中では《Beauties of Forza del destino Op.1794》が最も作品番号の大きな作品でしたが、アメリカ議会図書館にはOp.1917という作品が存在しました。それが1885年出版ということなので、作曲者はその後6年ぐらい存命だったいうことになります。もしかすると、作品番号が2000を超えているということもあるかもしれません!



1998
Charles Grobe (IMSLP)
Sweet Spirit, Hear my Prayer Op.1998


 チャールズ・グローブ(1817頃-1879)は、アメリカで活躍したドイツ出身の作曲家。彼の作品の大部分を占めるのが当時の人気旋律を主題としたピアノのための変奏曲で、中にはフォスターの作品など今日でも馴染み深い旋律を用いたものもあります。Pazdírekに載っている中では《Put me in my little bed Op.1896》が最も作品番号の大きな作品ですが、IMSLPにある作品リストによればOp.1998まで存在するようです(ニューグローヴ音楽事典からの情報らしい)。Op.1998に関しては楽譜を確認できませんでしたが、その一つ前の《It was a dream Op.1997》はアメリカ議会図書館でデジタル楽譜が公開されています。



 以上に挙げた作曲家とその最大の作品番号を、誤りである可能性が高そうなものを除いた上でまとめたのが以下のものです。


500  A. M. Cohen
501  Christian Traugott Brunner
502  Marius Carman
507  Louis Kron
509  Charles Fradel
509  Hermann Wenzel
514  Wilhelm Volckmar
519  Nicolo Coccon
526  Wilhelm Popp
526  Hermann Josef Schneider
530  Carl Kratzl
551  Traugott Munkelt
556  Henri Kling
560  Otto Hackh
566  Carl Michael Ziehrer
570  Johann Evangelist Hummel
584  Josef Löw
588  Carlo Acton
589  Carl Wappaus
600  Rudolf Förster
612  Oskar Junghähnel
612  Bernardo Calvó Puig
622  Franz Abt
657  Ernst Simon
673  Alfonso Cipollone
675  Otto Teich
679  Ferdinand Friedrich
694  Franz Behr
746  Luigi Bordèse
788  Serafino Alassio
800  Wilfrid de Scheirder
803  Hans Engelmann
814  Joseph Rixner
824  Hermann Starke
861  Carl Czerny
892  Óscar de la Cinna
920  Pietro Lebano
986  Giuseppe Galimberti
1001  Theodor Franz Schild
1039  Fritz Kirchner
1200  Antony Lamotte
1283  Arnoldo Sartorio
1304  Ludwig Gruber
1312  Robert Stolz
1402  Ferdinand Leicht
1917  James Bellak
1998  Charles Grobe



 現時点で私が確認できた中で、史上最も大きな作品番号の作品を書いた作曲家はチャールズ・グローブということになります。ギリギリ2000の大台に届いていないのが少し残念に思えます。もしかすると、次点のジェイムス・ベラックが未発見の作品で2000を突破しているということがあるかもしれませんが。

 こうしてまとめてみて気付くのは、巨大な作品番号の曲を書いたのはドイツ圏の作曲家が多いということです。『The Etude』誌のアルノルド・サルトリオについての記事の中でも「……昨今のドイツ人作曲家たちは、疑いなくあらゆる音楽のマラソンの勝者である。他の国籍の作曲家で作品番号1000まで或いはそれ以上に書く忍耐を持つ者はほとんどいない。」と同様のことが指摘されています。

 また、1位のグローブと2位のベラックがアメリカで活躍した作曲家という点も注目すべきかもしれません。19世紀アメリカは、魅力的な新興の音楽市場としてH.ヴュータンやタールベルク、H.エルツなど多くのヴィルトゥオーゾたちを引き付けましたが、楽譜を販売するにあたっても、需要に対して作曲家が不足していて、書けば書くだけ作品が売れる有難い市場だったのかもしれません。

 時代に着目してみると、19世紀後半~20世紀初頭に活躍した人物が多いように思われます。19世紀に入ってどんどん成長を続けた音楽市場ですが、20世紀に入るとレコードの登場によりその形態に変化が訪れます。楽器を自分たちで演奏しなくても手軽に音楽を楽しめるようになったわけで、もしかすると、このことが家庭で楽しむようなピアノ小品の楽譜の需要低下を招くことがあったのかもしれません。すなわち、20世紀初頭は、家庭向けのサロン小品が最後の輝きを放った時代であったのではないかということです。そんな時代ゆえに、作品番号が500や1000を超える多作家が多く現れているのかもしれません。

 最後に述べておきたいのが、作品番号にして500を超えるような作品を残しているにもかかわらず、ほとんど楽譜を見つけることができないという作曲家が多数いたことです。また、詳細な情報が見つからない作曲家も少なくありませんでした。膨大な数の作品を書いた作曲家が、必ずしも大人気作曲家だったというわけではなかったのかもしれません。それにしても、多量の作品を残したにもかかわらず、全然楽譜が見つからないというのには、時の流れの残酷さを感じさせます。これは忘れられた19世紀のピアノ作品を普段から探索している私が常々実感していることではありますが……。








おまけ

実は、作品番号が5桁の作品が存在しました!!!
しかも、作曲者はそこそこ有名。

マックス・レーガーの《"Ewig dein!" Salonstück》という作品で、Op.17523という作品番号が付けられています。とはいえ、 当然、彼の17523番目の作品というわけではなく、冗談や皮肉で書かれたものだと思われます。

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