Léon Kreutzer: Six Études de Première force Op.4

今回音源を作成したのは、ベートーヴェンの《クロイツェル・ソナタ》の被献呈者として知られるロドルフ・クロイツェルの甥レオン・クロイツェル(1817-1868)による練習曲です。
以前の記事では、彼の名前をクレゼールと表記していましたがクロイツェルに変えました。

レオン・クロイツェルの作品は、以前に《ピアノの体操, 6つの練習曲》という19世紀半ばにして驚異の前衛性を誇る練習曲集を紹介しましたが、今回紹介するのは《6つの卓越の練習曲集 Six Études de Première force Op.4》(IMSLP)という練習曲集です。この練習曲集は《ピアノの体操》に比べるとまだ穏健な作品に思えますが、それでも独創的な作品であることは楽譜を見るだけでも伝わってきます。19世紀には、「caractéristique 性格的」、「de genre 様式の(風俗的)」、「de salon サロン用」など様々な修飾語の付いた練習曲が書かれていますが、「de première force 卓越した、一流の」という語の付いたものはこの作品以外に私は見たことがありません。このようなタイトルにも作曲者の気概が表れているのかもしれません。


この練習曲集の出版年については確証ある情報は見つけられませんでしたが、『Revue et gazette musicale de Paris』1852年11月7月号にPaul Smith(音楽著述家・劇作家エドゥアール・モネ(Édouard Monnais, 1798-1868)の筆名)によるこの練習曲集の批評が掲載されているので、これに近い時期に出版されたと想像されます。その批評の拙訳を以下に記します。


 私の手元にある6つの練習曲の作曲者レオン・クロイツェルは、生まれ付きないし後天的に獲得されたあらゆる才能よりは、知性によって力量を誇る音楽家の一人である。ある日、彼は「卓越の」と題した6つの練習曲を書く気になった。彼は、何しろ交響曲やミサ曲、オラトリオ、四重奏曲、ロマンス、音楽と音楽家に関する書物さえも書く気になれる。どうしてそうしないことがあろうか?彼は、それら全てを書いているし、まだ他のものもたくさん書くであろう。読者諸君は皆、彼がどのように筆を執るのかを知っているし、その多くは彼の作曲家としての仕事も知っている。これらのピアノ練習曲が大まかに着想され、美しい和声と巧妙な転調とともに大胆に紙上に書き付けられたものであると述べて伝えるまでもないだろう。何よりもまず私が注目したのは、それらが真の練習曲であり、多かれ少なかれ優雅で多かれ少なかれ斬新な着想の展開へ向けた単なる適当な枠組みではないということである。レオン・クロイツェルは、自身の練習曲が何らかに役立つことを望み、そのために――恐らくは原則として彼自身の練習のために――それを書き、そして、この練習が彼自身に大きな利益をもたらしたことが認められるのと並び、有名無名の他のピアニストたちに寄与することを考えたのである。私は、とりわけオクターヴによる3曲目の練習曲をおすすめする。諸君が上手く弾きこなすためにこれに取り組むこととなるのを心より願いながら。


『Revue et gazette musicale de Paris』1852年11月7月号
Paul Smith 「Six études de première force par Léon Kreutzer. - Ouvertures de Guillaume Tell et de Sémiramis, à quatre mains, par Henri Rosellen.」より



今回、MIDIを作成した第6番は「憂鬱 La malinconia」という表題が付けられています(これと「奇想曲 Capriccio」と題された第2番以外は無題です)。重音の練習曲で、大胆で目まぐるしい転調が特徴的です。





なお、上記の批評でおすすめ曲として挙げられている第3番は、4candlesさん作成の音源があります。
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