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Rudolf Willmers (1821-1878)

ルドルフ・ヴィルマース(Heinrich Rudolf Willmers, 1821-1878)は、ドイツのピアニスト・作曲家です。コペンハーゲン生まれとする説もあり、デンマークの作曲家と言及されることもあります。ベルリン(あるいはコペンハーゲン)で生まれた彼は、ヴァイマールでフンメルにピアノを師事し、1836年にはデッサウへ行きシュナイダーの下で作曲を学びました。

1838年から、ヴィルマースは数々演奏旅行を実施しヴィルトゥオーゾとして成功を収めました。ドイツ北部、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなどを訪れ、1853年にはウィーンに定住しています。1864年にはシュテルン音楽院の教授として招聘されベルリンに居を移しましたが、1866年には健康不良のためその職を辞し、ウィーンへ戻ることとなりました。1878年、ヴィルマースは突如精神障害に陥って病院へ運ばれ、程なくして世を去っています。


ヴィルマースは、作品番号にして138に上る作品を残しました。その大部分はピアノ曲ですが、他には、ピアノ四重奏曲(Op.85)やヴァイオリン・ソナタ(Opp.11, 94)等を手掛けています。

ロベルト・シューマンはヴィルマースの処女作《6つの練習曲 Op.1》の批評を残しており、玄人からの賞賛を受けるに値するであろう作品と評価しています。そして、彼はピアノ練習曲というジャンルに囚われるべきではなく、その才能を持ってすれば管弦楽曲においてさえ優れたものを成し遂げられるだろうと将来への期待を表明しています。


演奏家としてのヴィルマースは、トリルの技巧において並び立つ者がいなかったそうです。エルンスト・パウアーには以下のように書いています。

彼が得意としたのは最上に完璧なトリルであった。実際のところ、所謂「トリルの鎖 Triller-ketten」の演奏におけるトリルの際だった美しさ――その強弱――と見事な均質さは、彼のような至高の熟練を以て披露されることはこれまでになかった。

(Ernst Pauer『A dictionary of pianists and composers for the pianoforte』 p.129 より)

文中にある「トリルの鎖」は、恐らく、彼が作曲した《トリルの鎖, カプリス=エチュード Trillerketten, Caprice-Etude Op.69》を指していると思われます。彼のトリル技巧が存分に発揮されているであろうこの作品の楽譜を見てみたいものです。

また、マルモンテルは、著書『古典と現代のピアノ技法 Art classique et moderne du piano』の第2巻として、膨大なピアノ作品を難易度や種類別に並べたカタログを掲載していますが、「超絶難度の極み」に達した作品として、リストとロベルト・シューマンの作品群とともに、ヴィルマースの《「預言者」による幻想曲 Op.68》を挙げています(p.116)。
リストとシューマンの作品については、大作曲家補正が掛かっているような気がしなくもない(《リゴレット・パラフレーズ》や《交響的練習曲》等が、メローの練習曲やアルカンの大ソナタより高難度になっているのは疑問)と私は思うのですが、その補正がないであろうヴィルマースのOp.68は掛け値なしの恐ろしい難曲なのかもしれません。こちらも楽譜を見てみたい!



今回、MIDIを作成したのは、《2つの演奏会用練習曲 2 Etudes de Concert Op.28》の第2曲〈バッカスの巫女の踊り La Danse des Bachantes〉です。第1曲〈祭りの行列 La Pompa di Festa〉と共にその譜面から作曲者のヴィルトゥオジテが伝わってくる超絶技巧的な作品で、若きヴィルマースの才能に期待を寄せたロベルト・シューマンの妻クララに献呈されています。



バッカス(Wikipedia)は、サン=サーンスの《サムソンとデリラ》のものをはじめとする「バッカナール」でクラシック音楽ではおなじみのローマ神話の酒神です。その信女(Wikipedia)たちの踊りを題材としたこの曲は、優雅さとは程遠い熱狂的な舞曲で、途中には狂乱したかのような荒々しい曲調にもなります。

技巧面では、右手にずらっと並んだ重音が特徴的で、また、激しい跳躍が求められる箇所もあります。


なお、ヴィルマースは、チェス・プレイヤーとしても活躍したようで、チェス・コンポジション(Wikipedia、詰将棋みたいなものかな)も残しているようです。
下記サイトに、以下のような逸話が掲載されていたので邦訳してみました。
http://www.left-hand-brofeldt.dk/Catalogue_w.htm
http://chesscomposers.blogspot.com/2012/10/october-31st.html

コペンハーゲンのリサイタルでシューマンの《謝肉祭》を演奏中、ヴィルマースは突然止まって袖口に何かを書き、それから演奏を続けた。後に、解答が閃くまで難しいチェスの問題に一週間苦闘していたと彼は説明した。「私は、それを頭の中から取り去って自身の演奏に完全に集中するため、[閃いた解答を]書き留めておかなければならなかったのです。」






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