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青島広志編『パラフレーズ・オ・サロン 声楽曲をテーマにしたピアノ曲集』(全音楽譜出版社)について

 今回は、本ブログでは初めてとなる楽譜のレビュー記事のような投稿となります。取り上げるのは全音楽譜出版社から1996年に刊行された『パラフレーズ・オ・サロン 声楽曲をテーマにしたピアノ曲集』という楽譜で、編者は作曲家等としても著名な青島広志氏です。20年以上前の楽譜ですが、私は5年前くらいに堂島のジュンク堂書店で購入したと記憶しています。やはり現在は絶版のようで、ネット通販でも入手が難しいかもしれません。あの時、店頭で見かけたのを買っておいて正解だったなと改めて思います。



 内容はというと、書名の通り歌劇や歌曲、民謡を原曲としたピアノ編曲作品が集められているのですが、それが他所ではまず見かけることのないラインナップなのです。編者の青島氏がヨーロッパ滞在中に入手した古楽譜から8曲を選定したもののようで、具体的には下記の通りです。


 このように今日ではあまり知られていない19世紀作曲家の作品が並んでおり、私のような者にとっては垂涎ものです。特に、Hünten、Miller、Jungmannの曲については私が知る限りでは、2018年10月現在、Web上で閲覧できる楽譜がなさそうです。MeyerのOp.45もポーランド国立図書館が比較的最近になって公開するまではありませんでした。



 続いて、この楽譜についている解説文についてですが、突っ込みどころが結構あります。まず、Charles Voss、François Hünten、Chr. Miller、Albert Jungmann、Leopold de Meyerが、生没年すら不明な人物扱いされています。このうち、Millerについては私も情報が手に入れられませんでしたが、VossHüntenMeyerについては、当ブログでも過去に取り上げている通り、生没年や略歴について判明しています。Jungmannについてはまだ取り上げていませんが、1824年生まれ1892年没でサロン向けのピアノ曲を多数残したドイツの作曲家です。

 とはいえ、このように私が突っ込みを入れられるのは、ネットで数多の情報を入手できる時代であるからでしょう。この楽譜が出版されたのは1996年で、インターネットが一般に普及していない頃です。今日であれば、まったく音楽の知識がない人に、これらの作曲家の生没年を調べてほしいと頼んでも、すぐに答えを見つけてもらえそうですが、当時は音楽の専門家であってもなかなか情報を見つけられなかったのかもしれません。

 しかし、Hüntenについては、シューマンの評論の中にも名前が出てきますし、定番といえる『ニューグローヴ世界音楽大事典』にも項目があったはずです。それに、もっと古くに出版されているであろうヤマハミュージックメディアの『初歩のピアノ練習曲集2』(1998年時点で第12刷なので、第1刷は1996年より昔の可能性が高い。©1991と記載されているのでこれが第1刷の年か?)にはしっかりと略歴が掲載されています。また、Meyerについても、当時すでに邦訳(1978年、現代芸術社)が出版されていたハロルド・C・ショーンバーグの『The Great Pianists』に記述があります。これらに鑑みると、当時としても調査不足だったのは否定できない気がします。


 他にも、突っ込みどころはあります。一部の作曲家名のカタカナ表記が少々おかしい点です。Hüntenがハントンと表記されています。もしかすると、英語圏ではこのような発音がされているかもしれませんが、ウムラウトがついているので、素直に読めば独語の発音を採用しそうなところです。もう一つ、Jungmannがヤングマンとなっているのは独語と英語が混ざってしまっています。


 最後に一つ、Schulhoffの作品の解説で、「ライプツィヒのマイエンス社から出版された」という記述がありますが、ドイツの都市マインツ(仏語表記でMayence)のショット(Schott)社の誤りではないかと思われます。ライプツィヒというのは、この曲を同時出版社した会社として表紙に併記されていたC.F.Leede社の所在地でしょう。


 あと、 この楽譜自体のことではありませんが突っ込みを。全音オンラインショップでこの曲集が、ピアノ曲集(邦人作品)に分類されています。青島氏は編集しただけなのに。



 このように、ねちねちと指摘を入れてしまいましたが、大変希少な作品が掲載された曲集です。興味のある方は、入手困難なので、もし見かけたら逃さずに購入しましょう!
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