Carl Czerny (1791-1857)

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▲Carl Czernyの肖像 Gallica / Bibliothèque nationale de France より 加工・転載

カール・ツェルニー(Carl Czerny, 1791-1857)といえば、ピアノを習ったことのある人の多くにとって馴染み深い名前でしょう。現在、彼の書いた練習曲は、ピアノ学習者にとって不可欠ともいうべき存在となっています。それらの練習曲に苦しめられ、ツェルニーという名前にネガティブなイメージを持っている人も少なくないかもしれません(私のTwitterのタイムラインでは、彼は結構人気があるように思われますが)。しかし、練習曲は彼の書いた膨大な作品のほんの一部に過ぎず、実に多様な作品が人知れず眠っています。

ツェルニーは、1791年にウィーンで生まれました。オーボエ奏者及びオルガニスト、ピアニスト、歌手であった父ヴェンツェル(Wenzel Czerny, 1750-1832)から早期教育を受け、10歳の頃には主要作曲家のあらゆる作品を弾きこなすことが出来るようになっていたといわれています。また、その頃、ヴァイオリニストのクルムフォルツ(Wenzel Krumpholz, 1750-1817)の紹介でベートーヴェンに出会い、才能を認められ、弟子入りすることとなりました。

1800年、ツェルニーは、ウィーンでモーツァルトの「ピアノ協奏曲第24番」を演奏し、ピアニストとしてのデビューを飾りました。彼は、ベートーヴェンのあらゆる作品を暗譜演奏できたといわれ、1812年に「皇帝」協奏曲のウィーン初演で独奏者を務めたということは有名です。しかし、彼が力を注いだのは、演奏家としての活動よりも教育者や作曲家としての活動でした。

彼がピアノを教え始めたのは、弱冠15歳の時でした。彼は、一日に11、12時間もをレッスンに費やし、残った時間を使って作曲の筆を執り出版社からの需要に応えていたといいます。この忙殺の日々は、1836年にピアノ教師としての活動を辞めるまで続きました。

ツェルニーの主な弟子を次に挙げます。

・Franz Liszt(1811-1886):言わずと知れたピアノの魔術師
・Sigismond Thalberg(1812-1871):以前の記事を参照
・Theodor Kullak(1818-1882):ドイツのピアニスト・作曲家。ベルリン音楽院、新音楽アカデミーを創設。
・Theodor Döhler(1814-1856):以前の記事を参照
・Leopold von Meyer(1816-18):オーストリア出身のピアニスト・作曲家。世界各地を演奏旅行し「ライオン・ピアニスト」と呼ばれた。
・Louis Lacombe(1818-1884):パリ音楽院卒のピアニスト・作曲家
・Alfred Jaëll(1832-1882):トリエステ出身のピアニスト・作曲家。夫人のMarieも作曲家として知られる。
・Theodor Leschetizky(1830-1915):ポーランド出身のピアニスト・作曲家。弟子にA.シュナーベルやパデレフスキ等がいる。
・Emilie Belleville-Oury(1808-1880):ドイツの女流ピアニスト・作曲家

ツェルニーは、驚くべき多作家で、作品番号にして861にも及ぶ作品に加え、作品番号なしの編曲、未出版作品を残しています。そのジャンルは、ピアノ曲のみならず、交響曲、協奏曲、室内楽曲、宗教音楽など多岐に及んでいます。ピアノ曲に関しても、愛好家向けの平易な作品からヴィルトゥオーゾ向けの演奏会用作品まで、流行旋律による幻想曲や変奏曲からソナタやフーガのような古典様式による作品までさまざまです。また、彼は、J.S.バッハやD.スカルラッティの作品の校訂も手掛けています。

ツェルニーは、1836年にライプツィヒ、1837年にパリとロンドン、1846年にロンバルディアへ旅行したのを除き、その生涯の殆どをウィーンで過ごしました。1850年代になると健康が悪化し始め、1857年に痛風により世を去りました。彼は膨大な遺産を残しましたが、生涯独身で親族もいなかったため、遺言状によりその大部分が慈善事業や芸術団体に寄贈されることとなりました。



性格的で華麗な序曲 Ouverture caractéristique et brillante Op.54

4手連弾のための作品。ツェルニーの作曲家としての才能が発揮された傑作だと思います。


速度教本 Die Schule der Geläufigkeit Op.299 より 第7番

「40番練習曲」と呼ばれている作品です。Hofmeisterのカタログによると1833年にディアベリ社から出版された時点では30曲から成る曲集だったようで、1838年に同社から出版された際に新たな10曲が加えられ現在のように40曲になったようです。


劇場叢書, 人気歌劇による小ポプリ Theater-Bibliothek, kleines Potpourri über beliebten Opern Op.463 より No.13 ベッリーニの歌劇「ノルマ」の人気動機による小ポプリ第1番 1tes kleines Potpourri nach beliebten Motiven aus der Bellini'schen Oper: Norma

人気歌劇を愛好家向けのポプリ(接続曲、メドレー)に編曲したシリーズで、1837年から1845年にかけて51曲が出版されたようです。今回紹介する第13番では、ベッリーニの歌劇「ノルマ」から合唱「Dell' aura tua profetica」やカヴァティーナ「Meco all'altar di Venere」等の主題が用いられています。


夜想曲 Nocturne Op.647

ベートーヴェンがあと十年ほど長生きして夜想曲を書いていたらこんな感じになっていたかもしれません。特に、中間部は悲愴ソナタの第2楽章を髣髴させます。


指捌きの技法 Die Kunst der Fingerfertigkeit Op.740 より 第28番、第47番

「50番練習曲」と呼ばれている作品です。この練習曲集、なかなか良い曲も含まれていると思うのですが、実際に練習するとなると辛いものなのでしょうか。今回、MIDIを紹介する28番なんかは演奏会で弾いても遜色なさそうです。


ドメニコ・スカルラッティの様式によるソナタ Sonate im Style von Domenico Scarlatti Op.788

ツェルニーが校訂も手掛けたドメニコ・スカルラッティのチェンバロ・ソナタの作風に則った単一楽章による無窮動風のソナタです。跳躍や華麗なパッセージが、スカルラッティの時代よりも音域の拡大された鍵盤の上で縦横無尽に繰り出されます。


若いアマチュアの楽しみ, 20の華麗な小レクリエーション Amusement des Jeunes Amateurs, 20 petites Récréations brillantes Op.825 より No.4 「神よ、皇帝フランツを守り給え」変奏曲 "Gott erhalte Franz den Kaiser" Variations

「神よ、皇帝フランツを守り給え」は、ハイドンによって作曲されたオーストリア帝国の国歌で、今日では、タイトルと歌詞を変更したもの(「ドイツの歌」)がドイツ国歌に採用されています。


30のメカニズムの練習曲 30 Etudes de mécanisme Op.849 より 第1番、第26番

「30番練習曲」と呼ばれている作品です。



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