Henri Herz ? :Sontag's Waltz

先日よりS氏のゴーストライター騒動が世間で話題となっていますが、今回はアンリ・エルツ(以前の記事)の偽作「ゾンタークのワルツ」の話を紹介します。ただ、エルツの場合は、真の作曲者が名義上の作曲者に無断で曲を書いていたわけで、ゴーストライターの件とは問題の性質が異なるのですが。

エルツは、アメリカの音楽店で「アンリ・エルツによるゾンタークのワルツ」と表紙に記された楽譜を目にしますが、中身を見てみると身に覚えの作品だったという経験を自著「我がアメリカ旅行(Mes voyages en Amérique)」において語っています。

以下の文は、エルツの自著の一部を訳したもので、彼が、音楽店で日傘を使って打鍵してピアノを試弾する婦人を目撃した場面に続くものです。

その婦人が店を出たところ、私は「アンリ・エルツによるゾンタークのワルツ Sontags walse, by Henri Herz」と表紙に書かれているのが読み取れる音楽作品を目にした。ページを捲ると、その曲は私の作品ではなかった。
「これは何ですか?」と私は非常に困惑して音楽店の店主に言った。
「あなたが私に尋ねるとは!これはアメリカであなたの評判を築き上げた作品ですよ。あなたの他の作品は多かれ少なかれ高く評価されていますが、この作品はあなたの快い宝石箱で最も美しい珠玉だと看做されています。」
私はこの栄誉を取り下げることを願ったが、ウルマン*は私の意図を見抜き、私を寄せ付けなかった。
彼は私に言った。
「異議を唱えてはいけません。彼らを傷つけるだけです。もっとも、誰もあなたを信じようとしないでしょうが。」
私は秘書の忠告に従った。今日でもなお、私がアメリカのある界隈でいくらかの評判を享受しているのなら、きっと恐らく、「ゾンタークのワルツ」の利点のおかげである。


*Bernard Ullman (1817-1885):ハンガリー出身のアメリカの興行師。新大陸でエルツの秘書・マネージャーを務めた。原文ではUlmannと綴られている。


このように、アメリカで非常に人気を博していたらしい「ゾンタークのワルツ」ですが、曲の内容自体は何の変哲もないものです……。

MIDIはこちらから



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