William Vincent Wallace (1812-1865)

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▲William Vincent Wallaceの肖像 The New York Public Library Digital Collections より 加工・転載

本日は、アイルランド出身のピアニスト・ヴァイオリニスト・作曲家ウィリアム・ヴィンセント・ウォレス(William Vincent Wallace, 1812-1865)の没後150年ということで、彼の《歌劇の思い出 Souvenir de l'Opéra》から《モーツァルトの思い出, 歌劇『魔笛』によるサロン用幻想曲 Souvenir de Mozart, Fantaisie de salon sur l'opéra Zauberflöte》を録音してみました。

ウォレスは、ウォーターフォードに生まれ、連隊で楽団の指揮者を務めていた父から様々な楽器を教わりました。1825年に父が軍を除隊すると、一家はダブリンへと移り住みましたが、そこでウィリアムは王立劇場の管弦楽団でヴァイオリニストを務め、常任の指揮者が不在の際には代わりに楽団を率いることもあったといいます。1830年には、サーリスの大聖堂のオルガニストに任命され、また、同地のウルスラ会修道院で音楽教師も務めました。そこで教え子のイザベラ・ケリー(Isabella Kelly)と恋に落ち翌年に結婚しました。彼女の父親はウォレスがプロテスタントであることを理由に結婚を反対していたため、その時、彼はカトリックに改宗しました。ミドルネームのヴィンセントは、その際に授かったものだそうです。1831年には、ダブリンに戻り再び宮廷楽団の奏者を務めましたが、そこでパガニーニの演奏を聴いて強い感銘を受けたそうです。

1835年、ウォレスはヴィルトゥオーゾとしての成功を夢見て、壮大な旅へと出発しました。まず、彼はオーストラリア、タスマニア島のホーバートを訪れました。翌年にはシドニーへと移り、ヴァイオリニストとピアニストの二足の草鞋で演奏活動を行い、「オーストラリアのパガニーニ」とも称されたそうです。彼がオーストラリアを離れたのは1838年のことで、その後、南太平洋へ捕鯨の旅に出た、インドで虎狩りをしたなどといった冒険話も伝わっていますが、恐らくは作り話で、実際にはチリのバルパライソへ向かったとされています。それから、サンティアゴ、ブエノスアイレス、リマ、ジャマイカ、キューバ、メキシコシティ等を訪れ、1841年には米国に至り、ニューオーリンズ(1841)、フィラデルフィア(1842)、ボストン(1843)、ニューヨーク(1844)を歴訪しています。1844年には欧州に戻り、ドイツとオランダでの滞在を経て、翌年にはロンドンを訪れました。その年には、第一作目の歌劇《マリターナ Maritana》が初演され大成功を収めています。

1849年には再び南米を訪れますが、視力障害の治療が目的であったと考えられています。その翌年には、ニューヨークでピアニストのエレーヌ・ストーペル(Hélène Stoepel)と結婚しました(重婚だったともいわれる)。1858-59年にかけてはドイツで過ごし、1860年には歌劇《ラーライン Lurline》が上演され大成功を収めました。晩年は病に蝕まれ、フランス、オート=ピレネー県、ヴィウゾ(Vieuzos)のシャトー・ド・アジェ(Château de Haget)で最期の時を過ごしました。彼の亡骸は、ロンドンのケンサル・グリーン(Kensal Green)墓地に埋葬されました。

ウォレスは、大成功を収めた前述の《マリターナ》と《ラーライン》の2作に加え、《ハンガリーのマティルダ Matilda of Hungary》(1847)、《琥珀の魔女 The Amber Witch》(1861)、《愛の勝利 Love's Triumph》(1862)、《砂漠の花 The Desert Flower》(1864)といった歌劇も手掛けていますがそれらは不成功に終わっています。また、ピアノ曲もサロン向けのものからヴィルトゥオーゾ向けのものまで多数残しており、それらは当時は高い人気を誇っていました。一方、ヴァイオリニストとしての活躍にもかかわらず、ヴァイオリンのための作品は殆ど残っていないようです。

彼の歌劇《マリターナ》《ラーライン》やピアノ曲はNaxosなどからいくらか音源が出ていますので、興味のある方は聴いてみるとよいでしょう。




歌劇の思い出 Souvenir de l'Opéra から 第1番 モーツァルトの思い出, 歌劇《魔笛》によるサロン用幻想曲 Souvenir de Mozart, Fantaisie de salon sur l'opéra Zauberflöte

モーツァルトの有名な歌劇《魔笛》から、第2幕冒頭の《僧侶の行進》、パミーナとパパゲーノの二重唱《愛を感じる男の人達には Bei Männern, welche Liebe fühlen》、夜の女王のアリア《復讐の炎は地獄のように我が心に燃え Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen》の3曲が引用されています。また、《僧侶の行進》と《愛を感じる・・・》の間の繋ぎの部分には同歌劇の序曲を思わせるモチーフが現れます。





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