Edouard Wolff: Nocturne et Romanesca Op.109

今回は、ポーランド出身でパリで活躍したエドゥアール・ヴォルフの《夜想曲とロマネスカ Nocturne et Romanesca Op.109》を録音してみました。この作品は、1845年頃に出版され、S.タールベルク夫人(おそらく、ジギスモント・タールベルクの奥さんでしょう)に献呈されています。


第1曲《夜想曲》は、叙情的な旋律をもった曲で、譜例1のような半音階的な和声進行などショパンの影響を感じさせる箇所が散見されます。私は、この曲の雰囲気がショパンの最高傑作である《舟歌 Op.60》に少し似ていると思っています。調が《舟歌》と異名同音であることや譜例2のような重音によって歌われるメロディーがそう思わせているのかもしれません。冒頭で属音を伸ばす点も両曲に共通しているといえます。実は、ヴォルフの作品の方が《舟歌》よりも少し早く出版されているので、もしかすると、ショパンがこの作品から何らかのインスピレーションを受けた可能性があるのではないかと個人的に妄想したりしています。

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▲譜例1:半音階的な和声進行(IMSLPより)

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▲譜例2:重音で歌われるメロディー(IMSLPより)





第2曲《ロマネスカ》は、僅か2ページの素朴な小品で、調的にも曲想的にもに第1曲との関連性は薄く、2曲セットで演奏することは特に想定していないものと思われます。《ロマネスカ》を単体で出版するには短すぎるので、適当に《夜想曲》と抱合せにしたんじゃないかと私は想像しています。

1840年代初頭には、「ロマネスカ」と題された16世紀の舞踏曲(譜例3)を主題とした作品が多く書かれています。例えば、リストの《ロマネスカ, 16世紀のメロディー S.252》(参考楽譜参考音源)、タールベルクの《ロマネスカ, 16世紀の有名な舞踏曲 Op.36-4》(参考楽譜)、H.エルツの《16世紀の有名な舞踏曲「ロマネスカ」による大幻想曲 Op.111》(参考楽譜、かのワーグナーが4手用に編曲しています)などがあります。ヴォルフの《ロマネスカ》の旋律は、それとは別物で彼自身によるオリジナルのものなのかもしれませんが、おそらく、この16世紀の舞踏曲を意識して書かれているものと思われます。

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▲譜例3:16世紀の舞踏曲「ロマネスカ」の主題




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